インタビュー

実際にM & A を体験した売り手と買い手のお二人に代表の
齋藤がインタビューをしました。

企業M&A実例「株式会社Y.D.K」

話し手
株式会社Y.D.K 前社長
吉田 正貴 氏
株式会社Y.D.K 工場長 高橋 謙太郎 氏
愛和建設株式会社
株式会社Y.D.K 代表取締役社長
横山 隆太 氏
聞き手
税理士法人あゆみパートナーズ
代表社員(BIZ LINK YAMAGATA 代表)
齋藤 翔太

目次

  • 1. 創業期 ~親族経営から法人化へ~

    株式会社Y.D.K が、愛和建設のグループ傘下に入ってから約2年。
    事業承継(M&A)に関わった方々に M&A 当時の様子や現在の心境などを伺いました。

    齋藤
    はじめに、Y.D.K の創業について吉田前社長にお伺いします。
    吉田
    私が33歳の時、3人目の子供が生まれました。ちょうどその年に父親も定年退職して。当時サラリーマンとしての収入はあったのですが、プラスの生活資金が必要になり、新築した自宅の2 階でデザイン事務所を立ち上げました。
    当初2年ぐらいは1人でやっていましたが、その後、工場を借用し「ヨシダデザイン巧芸」という会社を立ち上げ、妻、従弟と私の3名で事業をスタートしました。
    齋藤
    デザイン事務所時代とあわせて37年。会社の創業から譲渡までの間のご苦労は。
    吉田
    事業拡大する際、福利厚生面、社会保険を充実させないと良い人材が来ないという問題があったので、事業を法人化しました(有限会社 ヨシダデザイン巧芸)。
    高橋工場長は専門学校を卒業した後すぐに面接に来てくれました。玄関に来て「高橋謙太郎です!面接よろしくお願いします!」と一言。自信をもって苗字・名前を言える人はなかなかいないので「これはいいな」と。それから、何も知らないまっさらな状態のほうが職人として育てていくのにいいと思って。それ以来ずっと一緒に仕事をしてきました。
    齋藤
    高橋工場長は入社して今年で何年目になりますか。
    高橋
    29年目になります。
    吉田
    高橋工場長は「ものづくり」に興味がありました。当時は県外の現場が多く、博物館や文化施設といったレベルの高い仕事も多かったのですが、高橋工場長には常にそうした取り組みに対する話題や認識を共有してもらっていました。それが今日まで続けてこられた理由ではないかと思います。

    株式会社 Y.D.K 前社長  吉田 正貴 氏

  • 2. 事業承継検討の背景とプロセス

    齋藤
    「自分もそろそろ引退を」と意識し始めたのはいつ頃でしょうか。その際、M&Aは選択肢にありましたか。
    吉田
    「事業承継」に際して、当初はM&Aは選択肢にはなく、スタッフへの承継を考えていました。
    一方では、「もしかしたら倒産するんじゃないか」という不安を感じたこともあって。
    ただ、このまま悪い状態では人に譲れない。「事業内容を好転させてから承継するんだ」という強い気持ちがありました。それがちょうど東日本大震災が起きた頃でした。
    しかし、その後、妻が体調を崩したり震災による債務の増加もあったりしたため、「何かを変えないと。まずは事業内容を好転させなくては」との一心で更に頑張っていたのですが、悪いことに自分の身体にも異常をきたしてしまいました。
    こうした状況もあり「60歳で辞める」と言いながら、なかなか辞められずにいました。

    愛和建設株式会社
    株式会社 Y.D.K 代表取締役社長
    横山隆太氏

    齋藤
    M&Aの前段として、事業・財務状態を良くしていくのは準備段階として必要なプロセスです。吉田前社長がとられた行動は素晴らしいと思います。
    横山社長はどのような経緯でY.D.K の譲渡希望を知りましたか。
    横山
    取引金融機関の担当者から話を聞きました。それまでY.D.K という会社は知りませんでしたが、日頃からM&Aの話は「まずは聞いてみる」というスタンスでしたので、今回も守秘義務の契約を結び、そこから相談がスタートしました。
    齋藤
    顔合わせをする前の愛和建設さんの印象についてお聞かせください。
    吉田
    愛和建設さんとは2回ほど一緒に仕事をしたことがあり、十分認識していました。加えて、趣味の釣り仲間で話をしていたら、そのなかに偶然愛和建設さんのOBの方がいらっしゃって、そんなご縁からも親近感を持っていました。
    齋藤
    横山社長からみた吉田前社長の第一印象はいかがでしたか。
    吉田
    吉田さんは日焼けをしていて職人さんのような手をされていたので、風貌から現場に出ている「職人社長」だとわかりました。それと、とてもいい表情でお話しされているので、「優しい人なんだろうな」という第一印象でした。
  • 3. 人と人との繋がり 生まれる信頼感

    齋藤
    M&A のプロセスで、従業員への開示は最後になることが多いようです。M&A について伝えられた時の印象、譲渡を検討していると聞いた時の高橋工場長のお気持ちは。印象、譲渡を検討していると聞いた時の高橋工場長のお気持ちは。
    高橋
    吉田前社長から今回のM&A についてある程度の内容は聞いていて、今後についても相談されていました。正式に伝えられたときも特に驚きもなく、「決めたんだな」と。自分としては、吉田前社長の決断についていこうと思っていました。
    齋藤
    横山社長と初めて面会したときはいかがでしたか。
    高橋
    今だったら大変失礼に当たるかもしれませんが、とてもフランクにお話しさせていただきました。長時間話をしていても、横山社長はとても丁寧に話を聞いてくれていたように思います。
    齋藤
    横山社長はどのような思いで面談を行いましたか。
    横山
    この高橋工場長との面談で未来を決めようという心づもりでいたので、緊張感を持って臨みました。そこで彼が「私はY.D.K のことが大好きです。あなたは引き継いでやっていけますか?」という旨のことを聞かれたので、彼は会社の今後を担う人材だと確信しました。
    面談の最後に彼から「自分も熱いとみんなから言われるけれど、自分以上に熱い人と会ったのは初めてです」と言われたのは、非常にうれしかった思い出です。
    齋藤
    本音で話ができたことが決め手になったのですね。山形という土地では、間(あいだ)に「人」がいて、そのひととなりを知ることで安心して事業承継をやってみようということになるのかもしれません。

    株式会社Y.D.K 工場長
    高橋謙太郎氏

  • 4. 譲渡する側 買収する側 それぞれの「決め手」

    齋藤
    M&A を進めるにあたり、お二人の気持ちが確定したのはどの時点だったのでしょうか。
    吉田
    M&A をするにしても、落ち込んでしまった事業を好転させてからでないと後々スタッフやお手伝いいただいた方々に迷惑をかけてしまうし、まして受け入れていただいた愛和建設さんに対して大変失礼なことになってしまう。そのためにもまずは自社のブランド、知名度を高めていきたいと思い、「どうやったら” ㈲ヨシダデザイン巧芸” として、新しい社会の中に入ってからも存在感を出していけるか」ということを模索していきました。その結果、上場会社3社と直接口座を開設することができ、ようやくM&A に臨めるという気持ちになりました。
    齋藤
    横山社長がお気持ちを固められた「決め手」はどのようなものでしたか。
    横山
    高橋工場長と話をした後、スタッフ全員と面談する機会を設けました。そこでスタッフ全員の会社への気持ち、家具製作という仕事に対する楽しさが感じられましたし、人間性や正義感、倫理観がずれた人はひとりもおりませんでした。
    また、齋藤さんが財務に関わる数字を全部見てくれて「大丈夫です」とおっしゃってくれたことも安心材料になりました。さらにY.D.K は上り調子にある会社で、家具の「作り方」は変わらないにしても「売り方」については、より可能性があるのではと感じていました。譲渡金額についても、吉田さんのお人柄が出ている内容でしたので、悩む必要がありませんでした。
    齋藤
    吉田さんのお人柄が出ている内容とは、どのようなことでしょうか。
    横山
    適正価格であったことと、不動産や資産の持ち方もしっかり考えられていたこと。そして借り入れもわずかだったという点です。やはり最後はお金の話になるんです。
    齋藤
    吉田前社長、そのあたりはいかがですか。
    吉田
    お金に関しては横山社長のお話の通りです。加えてひとつ条件を付けたことがありました。事業を継続してスタッフの雇用を守っていただくことです。さらに吉田、山形、横山の頭文字がY.D.K の『Y』の文字と一緒だと横山社長から言っていただき、「このご縁はここで決めるしかない」と思いました。

    税理士法人あゆみパートナーズ
    代表社員
    (BIZ LINK YAMAGATA 代表)
    齋藤 翔太

    齋藤
    お互い納得したうえで決断に至ったのですね。M&A 後、2年ほどたった今のお二人の気持ちは。
    吉田
    正直なところ、1 年のうちに何回か「もう少し頑張っていたら」という気持ちになるときはあります。ただ、1ヶ月に1度は県外の海に行き、釣ってきた魚を料理して仲間と楽しんだりする余裕ができました。
    齋藤
    横山社長はいかがでしょうか。
    横山
    私と高橋工場長で会社を引き継いだという想いで2年間経営を行ってきました。高橋工場長を筆頭にY.D.Kはとにかくチームワークが良いことが特徴です。今年度は新卒社員を採用し、そこにさらに新しい流れが生まれればと思っています。
    この2年間、二期連続黒字で終えることができましたが、コロナ禍ということもあり、なかなか新しい取り組みができませんでした。もっと可能性を広げるべく、商品開発プロジェクトなどを通してY.D.K の企業価値を高めていこうと思っています。
  • 5. 寄り添ってくれる  ” パートナー”

    齋藤
    今回のようなM&A の流れでは、仲介する第三者となる私のような役割についてどのように思われたでしょうか。
    吉田
    齋藤さんは「つなぎ手」になってくださったと思います。交渉時、どこかで間違った報告をしてしまうと辻褄が合わないところが出てしまいますが、全面的に信頼していたので素直に全部さらけ出すことができました。そして、会社に関する報告を全て正確に横山さんに伝えていただいた。事業内容について偏った報告もなく、きちんと評価をしてくれました。
    横山
    話をもってきていただいた金融機関の担当者と話し合い、今回は齋藤さんと一緒にやってみようということになりました。大変なこともありましたが、常に寄り添ってくれるM&A のパートナーとして、細やかにサポートしていただきました。
    また、M&A 後も引き続き監査として関わっていただくことで、現在も安心して事業を継続することができています。
    齋藤
    マラソンの伴走者のように一緒に走っていく。
    横山
    会計士にも税理士にもいろいろなタイプがいると思いますが、斎藤さんは穏やかなお人柄に加えて調整力、マネジメント力があり、心強かったです。
  • 6. 新しい「Y.D.K らしさ」を追い求めて

    齋藤
    それぞれにお伺いしたいのですが、これからのY.D.K に対してどのようなビジョンをお持ちでしょうか。
    高橋
    今と昔のY.D.K の違いは「新しいことにチャレンジし続けている」ことです。その結果、成功して吉田さんに良い報告ができるようになればと思っています。
    もう一つは、コロナ禍とはいえ売り上げが以前より落ちている点を何とかしたいと考えています。愛和グループ内の助けも得ながら、自ら売り先を開拓していくことにも力を入れたいと思っています。
    齋藤
    横山社長はいかがでしょうか。
    横山
    経営者として、社員が高い給料をもらうことができ、休みが充実している会社をつくることを目指しています。さらに、これから入ってくる新しい仲間にも創業者の考え、想いを伝える機会をつくりつつ、吉田さんに「待遇面がこうなりました」と良い報告が出来るようにしていきたい、そう願っています。また、時代に合った会社として適応しながらも、「Y.D.Kらしさ」とは何かということを追求し続けたいと考えています。
    「Y.D.Kというクリエイティブな家具職人集団がいることが愛和建設グループの魅力です」と私以上に社員全員が誇りに思っていて、それが既に一つのシナジーに成りえているので、今後の売り上げにも良い効果が出てくると確信しています。
    齋藤
    ありがとうございます。
    最後に吉田前社長からお二人にエールをお願いします。
    吉田
    これからのY.D.K に期待しているのは、愛和建設グループ内の会社として、売り上げにも企業イメージにもプラスの起爆剤になれる会社であること、そのきっかけをつくることです。これまでの良い伝統を守りながらも新しい「Y.D.K らしさ」を追求し、新たな道をしっかり歩んでいただければと心から願っています。
    齋藤
    私もY.D.K を含めた愛和建設グループの企業活動に引き続き関わらせていただきますので、ご協力よろしくお願い致します。

会社概要

株式会社 BIZ LINK YAMAGATA

所在地
〒990-0044
山形市木の実町8番3号プライムスクエア
山形ビル402号
設立
平成30年4月24日
代表者
齋藤翔太(公認会計士登録番号:033787)
E-MAIL
saito@ayumi-p.com
TEL
023-664-0113
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